*ハート誘拐事件ヒロインです* 「土方副長、お茶をお持ちしました」 「あぁ……」 土方副長の前にお茶の入った湯飲みをおく。 それと同時に髪が落ちてきて、かきあげて耳に引っ掛ける。 本当、邪魔なんだから。 「……随分伸びたな」 「え?あぁ、髪ですか? 本当に……。もう真選組に来て3ヶ月になりますからね」 「3ヶ月……もうそんなになるか?」 「はい」 沖田様のご好意で真選組にお勤めさせて頂いて3ヶ月。 屯所の皆様とも仲良くなったし、仕事もだいぶ慣れてきた。 お料理は元々苦手じゃなかったから、 最近は煮物はあたしがやるという暗黙のルールができた。 あとは定期的にお菓子を作ったり…… ……沖田様が喜ぶから。 分不相応な想いだって分かってるから、 口に出したり、沖田様にも想って欲しいなんて思わない。 ただお傍にいて、沖田様が喜んでくださったらそれでいい。 「いつも結っているだけだから、横の髪が邪魔で仕方ないんです」 「かんざしで留めればいいんじゃないのか?」 「かんざし……ですか」 お金にはそんなに困っていない。 お給料は決して高くないけど、安くもない。 だけど、お給金の半分以上がお菓子作りのための材料費に消えるし、 あとは着物を買うために貯金してたりするし。 「……かんざしなんて考えた事なかったです……。 それに、そんな高級品、あたしには似合いませんよ」 あたしは笑って、退室した。 * 「……だそうだ、総悟」 「はいィ!?」 唐突にかけられた声に変なところから声が出る。 土方さんは俺の返事に、小さく笑ってから さんが出て行った方を顎でしゃくった。 「jは髪が鬱陶しいんだとよ」 「……それがどうかしたんですかィ?」 「かんざしは高級品だから似合わないんだと」 「俺はそうは思いませんがね」 「ならプレゼントしてやったらどうだ?」 ああ、なるほど! 俺は土方さんに挨拶もせずに部屋から飛び出した。 * 「ったく……総悟もなんだかんだ言ってまだまだ子供だな。 大体俺も人がいい……。 けど、放置してたらあの二人は進展しそうにねェしな……」 * 「これを……あたしに、ですか!?」 「はい。まァ、ちょっとした差し入れでィ」 沖田様がくださったのはきれいな包み。 開けてもいいですか、と問うと沖田様はすこし照れたように笑って、頷いた。 あたしはゆっくりと、やぶかないように丁寧にそれを開ける。 中に入っていたのは、花飾りのついた朱塗りのかんざし。 「その……髪が伸びてきたんで、どうかなと……思ったんでさァ」 あたしは感動で言葉もでない。 * 反応がない。 どんなものがさんの好みか分かんなかったんで、 店員のお姉さんで選んで貰ったんですが…… 失敗だったんですかねィ……。 と思ったら、さんは目をごしごしっ、とこすって、にっこり笑った。 「ありがとうございますっ!だいじに……大事にします!」 俺の大好きな、春色の笑顔。 思えばこの笑顔に惹かれてさんを真選組に、と言って、 そして何度もこの笑顔に心を洗われて。 さんのことが、本当に俺ァ好きなんだなァ。 「……さん」 「はい?」 「いつもありがとうございまさァ」 さんはきょとんとして、それから 「お礼を言うのはあたしの方ですから」 と また春色の笑顔をこぼした。 赤い簪と春色笑顔。 そのコントラストが、まぶしかった。 END |
このヒロインと並ぶと沖田が白くなりますね。
うちの沖田はヒロインの前では本当純粋で優しいですが、
他の人に対しては腹黒くて鬼畜いです。
06/07/16 椎名絢