「全く、くだらないね」 は窓の外を見て、そう呟いた。もう一度、「くだらない」と繰り返し言う。何が、と問い返すと、この世の中が、と返してきた。決めた道を歩ませようとする親族たちもくだらない、決まった人生を歩むあたしたちもくだらない、くだらないと判っていながらも歩みを止めない自分が一番くだらない、と。この面白くない世界を生きていかなきゃいけない自分に哀れみさえ覚えるよ、と。俺はそうは思わないと返すと、梓馬はばかだからねえと返ってきた。 「梓馬は自分を否定したら世界が終わると思ってるんでしょ。だから自分を肯定するのに一生懸命なんだよ」 「……そういうお前はどうなんだよ」と返すと、は「あたしはいざとなったらアンタなんか捨てて自由恋愛するよ?家も家族も捨ててでも」と返してきた。親同士決めた婚約者と結婚するなんてくだらないよね、と。だけどお前はくだらないとわかっていながらも今俺の婚約者としてここにいる。数多くいる婚約者の中で自分が一番だと知っていて、その上で家のためにうちの祖母にまで取り入って、ここにいる。それはくだらなくないのか?と問えば、くだらないと思ってるから、王子様が現れたら素直に連れ去られるよ、と笑って。 「とんだロマンチストだな。それがどれだけ他人に迷惑をかけるか、わからないお前じゃないだろ?」 と馬鹿にしたように笑ってやると、 「迷惑かけるから、とか言って自分を殺すのは愚かじゃない?だからアンタはばかなんだよ」 と馬鹿にしたように笑われた。 今こうしてアンタの婚約者をやっているのは、それ以上に面白い人生を見つけられないから。王子様なんて現れないし、くだらない世界を彩る方法も見つからない。だからとりあえず親に恩を売る意味もこめてここにいる。 「それに、アンタはばかだけど、一緒にいるとそこそこ楽しいから」 あたしの素を知っても動じなかったのはアンタが初めてだから。 だからしばらくはアンタとその家族のくだらない茶番劇に付き合ってあげるよ、とは嫌味に笑った。 仮面カップル
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